協会のあゆみ /  結成記念演奏大会

 

 <協会結成記念演奏大会・プログラムより>

  [ 昭和35年6月11日  日本琵琶楽協会「結成記念演奏大会」会場:日本橋三越劇場 ]

                                (資料提供は輝錦統氏)

 ◇ 表  紙

 ◇ 内  容

● ご 挨 拶

 琵琶は古来東洋楽器の王と称され、殊にわが国に於ては、雅楽器中最高の位置に置かれていた。従って王朝時代には流泉、啄木、楊真藻の如き名曲が行われ、玄上、青山の如き名器があり、藤原貞敏、源博雅、藤原の師長、平経正の如き名手が出でて、実に諸楽器中の花と謳われていた。鎌倉時代から室町時代にかけては、琵琶は一変して平曲なる語り物音楽を生み出し、武家の間に最大の勢力を保持して居たが、当時戦乱の世に当って悲哀の情に過ぎたるものあり、茲に於て近代に至り薩摩琵琶先ず興って質実剛健の気風を養い、明治時代には筑前琵琶、錦心流琵琶起って高尚優雅な精神を育成せしめ、明治維新の大業や、明治、大正に渉って日本が世界に雄飛するに至らしめた原因の一つはこの琵琶楽精神の鼓舞に因ると謂うも過言ではない。

 然るに、昭和に入って世相の変化と共に、琵琶楽は漸く哀頽の一路を辿り、今や終戦後国民の思想混乱し、礼儀は頽廃し、道徳は正に地に堕ちんとし、国威を失墜すること大なるを憂い、全国の琵琶楽の権威は互に結束して日本琵琶楽協会を組織し、以てその挽回に努力することとなった。

 今回その第一回演奏会として、各派の宗家自ら陣頭に立ってその妙技を披瀝するは、古来未曽有の盛観であって、各宗家に対し深く感謝すると共に、この会の成功を心から祈るものである。

 

                                                                                日本琵琶楽協会名誉会長 田 辺 尚 雄

●琵琶楽の本質と現代化 

  いわゆる薩摩琵琶・筑前琵琶の二楽派を私は近世琵琶楽と呼びます。この近世琵琶楽の本質は何でありましょうか。一言でいえば、格調の高い語り物音楽であります。

 格調が高いということは、題材にも、遊里などの肉感的な色恋を扱わず、英雄の物語などを品格のある筆致で綴っているからであります。この事は、近世琵琶楽の生みの親島津日新公が武家の士女の教養の一つとした琵琶楽を始めたという伝統が、その後も保持されて来たからであります。

 そして、琵琶楽の音楽的形式は、歌というよりも語りものである所に特色があります。つまり言葉から生まれた旋律―言語旋律―で歌う叙事詩なのであります。従って楽譜をこねまわしてデッチ上げたフシで歌うのではなく、言葉がみがきをかけられ、高められて表現された美しい自然の声であります。従って、洋楽のように、2拍子とか4拍子とかで割り切れない拍子を持ち、数学的に計算されないリズムを表わしています。その点、浄瑠璃に似ていますが、琵琶にはまた浄瑠璃にない独特の曲風があります。そこが、われわれ琵琶楽愛好者には実にコタエられぬ魅力なのであります。

 しかし、時代は常に移り変わります。人間の趣味や思想が変われば、どんな立派なものでも振り向かれなくなります。夜店のたたき売りのように、「サアサアいらっしゃい」と大きな声を振り上げただけでは駄目です。もっと本質的な宣伝(啓蒙運動)が必要でしょう。そして、何よりも現代人をつかまえる魅力とは何であるかを研究する必要があります。思いつきで、歌謡曲や洋楽を安易に取入れることは、正しい琵琶楽の現代化ではありません。

 明治38年、落語の危機打解のため、岡鬼太郎を相談役として、当時の落語界の大家が一致して落語研究会を開き、それが落語の危機を救ったのだそうです。日本琵琶楽協会も伝統ある琵琶楽の危機を乗り切るため、今后あらゆる角度から研究することになっています。何卒皆様方の心からなる御支援をお願いいたします。

                               日本琵琶楽協会相談役 吉川英史

 ◇ プログラム(曲目と演奏者)

(1)彰 義 隊 (薩摩琵琶)      伊藤岳英

(2)若 き 敦 盛 (筑前旭会)    歌 谷口旭香・原島旭粧 

                   絃 橘 旭翁

(3)石 童 丸 (錦 心 流)         榎本芝水

(4)西 郷 隆 盛 (筑前橘会)              山元旭錦(橘旭宗代)

(5)竜 の 口 (錦 心 流)       山口錦堂

(6)潯 陽 江 (錦 心 流)       大館洲楓

(7)菅   公 (筑前橘会)      平田旭舟

(8)道 成 寺 (錦 心 流)       松田静水

(9)耳なし芳一 (錦 琵 琶)       水藤錦穣

(10)明治天皇と  (薩摩琵琶)        吉水錦翁

    乃木将軍

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